医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長
NPO法人 高齢者運動器疾患研究所代表理事
石橋 英明先生

 最近、「ロコモ」という言葉への理解が深まってきました。この「ロコモ」啓発のきっかけになったのは、超高齢化社会になって、健康上、問題のない状態で日常生活を送れる“健康寿命”を伸ばすことが必要となってきたからです。

 ひと口に「ロコモ」といっても、その人の年齢や生活習慣、症状などによって、状況は大きく異なります。たとえば、30~40代で今は運動器に何の問題もない方でも、週2回以上の運動習慣がない場合は、将来的に「ロコモ」になる可能性が高いのです。
また、50代以上で腰痛やひざ痛など運動器に何らかの支障がある方は、将来、要介護となるリスクが高い「ロコモ」予備軍といえるでしょう。

 では、「ロコモ」にならないためには、どうすればいいのでしょうか?

「ロコモ」の正しい予防法を知る

 「ロコモ」予防のための対策として、運動、特に下肢の筋肉を鍛えることが重要です。しかし、「どんどんやれば良い」とばかりに過度な運動を続けた結果、ケガをしたり、運動器に支障をきたしてしまう方や、痛みがあるのに「続けなければ」と考えて運動を休もうとしない方も見受けられます。自分のペースで少しずつ運動の強度を高めていくことが大切です。また、筋肉や筋力のアップには食生活も大切です。中でも、十分なタンパク質を摂ることが特に重要です。

 「ロコモ」を予防するのに、「これだけをやっていれば良い」というただひとつの対策はありません。大切なのは、“筋肉ケアを意識した適度な運動”と“筋肉・筋力をアップさせる食事によるケア”を自分の状況に応じてバランスよく続けることです。

「筋肉ケア」を意識し、適度な運動を習慣化する

 「ロコモ」は筋肉、骨、関節、脊椎(せきつい)などの運動器全体が関連して弱くなっていくのが特徴です。そして、その中心にあるのが“筋力の低下”といえるでしょう。適度な運動で筋肉をケアすることが大切です。その理由としては、以下の3つがあげられます。

1.自分自身が気をつけることが重要

 ロコモ予防には、骨も筋肉も両方ケアすることが大切ですが、筋肉を鍛えると骨にも負荷がかかり、結果的に両方を強くすることになり効果的です。

2.運動と栄養がまともに効く

 筋肉のターンオーバー(組織の入れ替わり)は3~6週といわれており、運動による刺激と栄養摂取による材料の供給で、筋量・筋力のアップが比較的短期間で期待できます。

3.「骨粗鬆症」「変形性関節症」「変形性脊椎症」の改善につながる

 筋量・筋力のアップは、「ロコモ」に関係の深い「骨粗鬆症」「変形性関節症」「変形性脊椎症」といった疾患の改善につながり、結果的に運動器全体に良い影響を与えます。

毎日の生活の中で、+αの負荷をかけてみる

「ロコモ」予防の運動といっても、何か特別なことをする必要はありません。現在、自立した生活を送れている方であれば、そこにプラスαの負荷をかけてあげればよいのです。たとえば、普段あまり出歩かない人は、まずウォーキングから始めてみましょう。また、日常生活の中でよく出歩く人は、ややきついと感じる速度でウォーキングをすれば、「ロコモ」対策になります。大切なのは、簡単な運動でも毎日続けることです。もちろん、負荷のかけ過ぎは禁物です。

良い姿勢を保つことで背筋を鍛える

 日常生活の中で少しでも筋肉を鍛えるためには、常に“良い姿勢”を保つことも大切です。実は、姿勢を良くするには筋力が必要で、背中が丸くなるのは背筋が弱ってきた証しです。良い姿勢を保てているかどうかを日頃から意識するようにしましょう。

骨や筋肉の“素”になる栄養素を積極的に摂る

 日常の運動に加えて、骨や筋肉の素になる栄養素も積極的に摂るようにしましょう。高齢になるにつれて、野菜中心の食事を好むようになり、食事の量も少なくなってきます。すると、肉や魚、乳製品などを食べる機会も減ってしまい、筋肉をつくるために大切なタンパク質や、骨をつくるために必要なカルシウムが不足しがちになります。特に、動物性タンパク質には体内で合成できない必須アミノ酸がバランスよく含まれていますので、日常的な摂取が欠かせません。

 また、筋力の維持には“ビタミンD”も重要な働きをしています。“ビタミンD”には、腸でのカルシウムの吸収を促すことで丈夫な骨をつくる働きがあります。タンパク質と共に“ビタミンD”を摂取することで、骨と筋肉の衰えを防ぎ、「ロコモ」予防にもつながると期待できます。

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