保健学博士
石田 良恵先生

女子美術大学名誉教授/日本ウエルネススポーツ大学教授。81年より東京大学で身体組成の研究に従事。89~90年フロリダ大学スポーツ科学研究所客員教授。専門は皮下脂肪・減量・加齢の研究。主な著書に『女性とスポーツ』『肥満を科学する』『女性とスポーツ環境』『ダイエット&ボディシェイプ』他多数。女子美術大学を定年退職後、登山に目覚め日本の山をはじめインドやヒマラヤ、キリマンジャロ等の海外の山にも毎年登る。高齢者の生涯登山を目指した筋トレの必要性から〝山筋ゴーゴー体操を提案〟。

加齢と共に低下する筋肉量。足腰が弱くなるのは、筋力の衰えから

 ヒトの筋肉には、大きく分けると瞬発力を発揮する〝速筋〟と、持久力を保つ〝遅筋〟の2種類があります。瞬発力や持久力というと、運動する時に必要なものというイメージがあるかもしれませんが、日常の動作にも大いに関連しています。例えば、立ったり座ったりする、あるいは歩くために足を前に出すという動きには、それらの動作の〝速い・遅い〟に筋肉量が関わってきます。
 ところが筋肉量は、加齢と共に低下してしまいます。日常的に運動をしていても、減少量には差異があるものの、加齢には勝てません。運動をしていないと、例えば太ももの筋肉量は70代に入る頃には、ピーク時の60%位まで減ってしまうのです。
筋肉は〝速筋〟のほうが落ちやすく、歳をとって、立ち座りがスムーズにいかなくなったり、歩く速度が遅くなったりするというのは、運動不足によって瞬発力に関わる速筋が低下しているためです。筋肉量の低下は、運動器に支障をきたすロコモの原因にもなります。
 足元がおぼつかなくなった高齢者の歩き方は、歩き始めの赤ちゃんと似てきますが、よちよち歩きの赤ちゃんの足にはまだ筋肉がついていないからです。赤ちゃんは、歩くことを覚え、毎日歩き続けることで徐々に筋肉がついてきて、しっかり歩けるようになります。逆に加齢と共に筋肉は衰えてくるのですが、軽い運動でも継続することで日常生活に支障のない筋肉を回復することが可能なのです。

家の中での〝ながら運動〟でも鍛えられる足腰の筋肉

 使っていない筋肉は特に、退化・萎縮しやすくなります。歳をとって、家の中で過ごすことが多くなると、足腰の筋肉が弱くなるのは座っている機会多くなり、太ももなどの筋肉を使っていないためです。ですから、テレビを見ながらの〝ながら運動〟でも構いませんので、足腰の筋肉を衰えさせないための簡単な運動を日常的に心がけるようにしましょう。
 下半身でも特に落ちやすいのが、太ももとお腹の筋肉。特に太ももを鍛えるには、〝椅子の立ち座り運動〟が効果的です。テーブルに手をついても構いませんので、立ったり座ったりの繰り返しを、何回もしてください。運動は、少しきついと感じる程度が、効果が高まります。最初は5回程度でも、次の日にはもう1回がんばってみる、手をついての立ち座りがスムーズにできるようになったら、手をつかずに行ってみる等、負荷を少しずつ増やしていきましょう。

 また、立った姿勢で体重を支えるために大切なのは、ふくらはぎの筋肉です。ここを鍛えるには、椅子の背やテーブルに手をついて行う〝背伸び運動〟が効果的です。ふくらはぎと腹筋に力をいれ、背筋をまっすぐにして、かかとの上げ下げを繰り返します。
 加齢による筋肉の退化・萎縮は30代後半から現れ、60歳代を境に急激に進みますので、早くからこうした運動を心がけるようにしましょう。また、継続できない運動は意味がありませんので、簡単な運動を日々積み重ねていくようにしてください。

ストレッチで柔軟性を維持。運動の効果を高めましょう

 〝しなやかな体〟というのは、若さを象徴しています。これは、体の柔軟性を表すものです。加齢によって筋肉量の低下と共に、関節もかたくなってきますが、運動しやすい柔軟な体を維持することで、可動域が広くなり、負荷も大きくなりますので、同じ運動を行っても、効率的に運動量を増やすことができます。ストレッチそのもので筋肉を鍛えることはできませんが、運動によるケガを防ぐためにも、ストレッチを併せて行うことをおすすめします。
 足を前後に開き、腰に手をあてて前に押し出すことで〝太ももと股関節のストレッチ〟、前足のひざに手を当て、後足のひざ裏を伸ばすことで〝ふくらはぎのストレッチ〟ができます。ウォーキングを日常的に行っている方は、前後にこうしたストレッチを行うことで、歩幅を大きく保ったり、使った筋肉をリラックスさせたりする効果があります。

運動とともにバランスのよい栄養と質の良い睡眠を

 筋肉を鍛えるためには、筋肉のもとになる栄養を併せて摂取する必要があります。特に、たんぱく質に含まれるアミノ酸〝ロイシン〟は筋肉作りに重要な役割を果たすことが知られています。〝ロイシン〟は、乳製品や大豆製品、牛肉等に多く含まれていますので、日頃の食事でも意識して摂るようにしましょう。
 また、しっかり睡眠をとることも大切です。年齢にかかわらず、成長ホルモンは深い睡眠中に分泌されますので、筋肉をつけるためには睡眠も欠かせない要素なのです。
 ロコモを予防するためにも、筋肉の低下量を軽減する日常生活を心がけるようにしましょう。

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