医学博士
稲次潤子先生

千葉大学医学部卒業。米国にてケネス・H・クーパー博士のもとでエアロビクス理論、予防医学の基礎を学ぶ。専門分野は予防医学、スポーツ医学等。藤沢市保健医療センターで医師として、生活習慣病の予防・改善、体力の増進・維持等の支援を行う。日本内科学会認定内科医・日本医師会認定健康スポーツ医。

過剰が肥満の原因になる〝白色脂肪細胞〟

 食欲の秋ともいうように、気候がよいこの季節は、食欲が減退することも少ないというのも一理あります。おいしく食事が摂れることは、体だけでなく心の栄養にもなりますから、喜ばしいことなのですが、食べ過ぎてしまいがちで気になるのは肥満です。肥満の敵といえば脂肪なのですが、実は脂肪にも大切な役割があります。
 脂肪細胞は〝白色脂肪細胞〟と〝褐色脂肪細胞〟の2つに分けられます。体脂肪の大部分を占めている〝白色脂肪細胞〟には、摂取したカロリーをエネルギーとして蓄積し、飢餓状態から人の生命を守るという役割があります。そして、エネルギーとして使われなかった余分なカロリーは内臓脂肪や皮下脂肪となり、外的刺激から内臓を守ったり、体温の低下を防いだりする役割もあるのですが、加齢に伴い基礎代謝量が低下すると、これが肥満の原因になるのです。
 また、〝白色脂肪細胞〟から分泌されるホルモン(レプチン)は、満腹中枢に働きかけることで過剰なエネルギー摂取を抑える役割もあります。ところが、食べ過ぎの状態が続き、レプチンの分泌が過剰になると、満腹中枢の働きがにぶくなり、カロリー摂取過多になり、余分な内臓脂肪がついたりする等、結果として肥満に陥りがちになります。

活性化すれば肥満を防ぐ〝褐色脂肪細胞〟

 もうひとつの〝褐色脂肪細胞〟には、脂肪を燃やしてエネルギー代謝を活発にする役割があります。〝褐色脂肪細胞〟は生まれた時が一番多く、筋肉のない赤ちゃんは〝褐色脂肪細胞〟で熱を産生して体温を保っています。ところが、成長して筋肉が発達することに伴い、〝褐色脂肪細胞〟は減っていき、成人ではごくわずかになるのです。肥満を防止するために筋肉量を多く保つことが大切だとよくいわれるのは、〝褐色脂肪細胞〟が少なくなる成人にとっては、筋肉が基礎代謝を促す一番大きな部分になるからなのです。
 とはいえ、少ないながらも〝褐色脂肪細胞〟は体内に存在していますから、この機能を活性化することは肥満防止にも役立つのです。そのために必要なのは日常的な運動です。運動することで、〝褐色脂肪細胞〟が活性化すると同時に、筋肉を維持することもできますので代謝力の向上にもつながります。そして運動は、肥満の抑制がメタボ予防につながるだけでなく、筋肉に刺激を与えることで、ロコモ予防も同時に期待できるのです。
 運動だけでなく寒冷刺激も〝褐色脂肪細胞〟の活性化には有効です。18℃以下の環境で行う運動(低温の水の中での水泳や寒い日の散歩やウォーキング等)は効果的だといわれていますので、寒くなってくるこれからの季節にも、無理のない程度に外へ出て運動することで効率よく〝褐色脂肪細胞〟を活性化することができます。家の中で過ごすことも多くなると思いますが、そんな時でもストレッチ等を心がけましょう。

〝褐色脂肪細胞〟を活性化するトウガラシの成分に注目

 ずいぶん以前より、トウガラシに含まれる〝カプサイシン〟は代謝を向上し、肥満予防に有効だということはいわれてきました。〝カプサイシン〟はトウガラシの辛み成分に含まれるものであり、肥満予防だけでなく、血行を促すことで冷え性を改善したり、食欲を促し疲労回復効果がある等、健康維持に役立つ成分です。〝カプサイシン〟は〝褐色脂肪細胞〟を活性化する効果も期待されていますので、こうした食材を日頃の食事に取りいれることは、運動に加えて有効な手段だといえます。
 でも、辛いものが苦手という方は、食事からの摂取はむずかしいことも考えられます。そんな時にはサプリメントで補うという方法があります。サプリメントには、〝カプサイシン〟と同様に代謝を促し、〝褐色脂肪細胞〟の活性化に働きかける〝カプシエイト〟とという刺激の少ない成分のものもあります。
 また、ねぎやにんにく等に含まれる〝アリシン〟も代謝を活発にする働きがありますし、ブドウ糖が中性脂肪に変化するのを抑制する大豆製品を摂取することも肥満予防につながります。
 ぜひ、代謝アップに有効な手段を活用しながら、上手に肥満予防を心がけてください。

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