-Journal of Veterinary Medical Science誌に掲載-

大阪府立公衆衛生研究所の髙木康博 博士(現所属・大阪大学大学院 医学系研究科 実験動物医学)を中心としたグループは、シスチン・テアニンの経口投与が免疫機能の低下した老齢マウスにおける免疫能を改善し、インフルエンザウイルス感染に対する抵抗力を増強することを確認いたしました。その研究成果がJournal of Veterinary Medical Science誌に掲載されました(J Vet Med Sci. 2009 Nov 25. [Epub ahead of print])。

発表骨子は、以下のとおりです。

▼表題
“シスチンとテアニンの同時投与は老齢マウスの免疫機能を増強してインフルエンザウイルス感染から個体を守る”
髙木 康博1)†, 栗原 重一2), 東 奈津美1), 森川 佐依子1), 加瀬 哲男1), 前田 章子3), 蟻坂 はるみ2), 柴原 進2), 秋山 由紀雄2)††

1) 大阪府立公衆衛生研究所 感染症部 ウイルス課
2) 味の素株式会社 健康基盤研究所
3) 大阪市立大学大学院 医学研究科 公衆衛生学
現所属: 大阪大学大学院 医学系研究科 実験動物医学
†† 現所属: 日本薬科大学

<研究の背景>
一般的に加齢に伴い免疫機能が低下することが知られています。一方、生体内で抗酸化反応を担うグルタチオン※1(以下、 GSH)の量も加齢により低下することが判明しています。以前、我々は3ヶ月齢の若いマウスを用いて、シスチンとテアニンの経口投与がGSH量の増加を 伴って抗体産生機能を増強することを報告しました(J Vet Med Sci 2007 69: 1263-1270)。今回は、加齢に伴って免疫機能が低下した老齢マウスを用いて、シスチン・テアニンの経口投与が抗体産生能を改善し、インフルエンザ ウイルス感染に対しても抵抗力が増強することを明らかにしました。

※1 グルタチオン(GSH)とは、
グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸から生体内で合成される抗酸化物質で、生体内外からのフリーラジカルや過酸化物などの活性酸素種から生体を保護する役割を持っています。

<実験方法>
24ヶ月齢の雌性C3H/HeNマウスに対して、シスチン・テアニンもしくは溶媒を1日1回、合計14日間経口投与し、最終投与翌日に抗原※2刺激を実施しました。刺激後経時的に採血し、抗原特異的な抗IgM, IgG抗体※3産生量を測定しました。
インフルエンザウイルス感染実験では、24ヶ月齢では感染により致死となるため、13ヶ月齢の雌性C3H/HeNマウスを用いました。このマウスに対して、シスチン・テアニンもしくは溶媒を1日1回、合計10日間経口投与し、最終投与翌日にインフルエンザウイルス(H3N1型※4)を鼻から感染させました。感染後、体重減少をモニターし、更に感染3、6、10日後に肺を摘出してウイルス量を測定しました。

※2 抗原とは、
非自己由来のタンパク質などをいい、生体内に入ると抗体を形成させます。
※3 抗IgM, IgG抗体とは、
抗体の種類で形が少し異なり、IgG, IgM, IgA, IgEなどがあります。
※4 H3N1型とは、
A香港型の季節性インフルエンザウイルス株の一つで、他にAソ連型(H1N1型)やB型などがあります。

<実験結果>
シスチン・テアニンを経口投与した老齢マウスでは、溶媒を投与した対照群の老齢マウスと比較して、抗原刺激後の特異的な抗IgM抗体産生(図1A)および抗IgG抗体産生(図1B)が有意に増強していました。この結果から、シスチン・テアニンは免疫機能が低下した老齢マウスの抗体産生能を改善すると考えられました。次に、シスチン・テアニンもしくは溶媒を投与した高齢マウスにインフルエンザウイルスを感染させました。感染3、6、10日後の肺のインフルエンザウイルス量を調べたところ、シスチン・テアニンを投与した高齢マウスでは、溶媒を投与した対照群の高齢マウスと比較して、感染6日後の肺ウイルス量が有意に低下していました(図2A)。さらに、インフルエンザウイルス感染後の体重減少について調べたところ、溶媒を投与した対照群の高齢マウスでは感染に伴って体重が減少するのに対して、シスチン・テアニンを投与した高齢マウスではその減少が対照群と比較して有意に抑制されていました(図2B)。この結果から、シスチン・テアニンは高齢マウスのインフルエンザウイルス感染に対する抵抗力を増強すると考えられました。

<結論>
シスチン・テアニンの経口投与は、免疫機能の低下した老齢マウスの抗体産生能を増強し、更にインフルエンザウイルス感染に対する抵抗力を強めることが明らかとなりました。

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